年老いて自分が国民に向かって毎朝放送する人物となっていると妄想している祖母の姿を、その妄想を暴き出していくという仕方で描くことで、人の自意識の閉じられた有様を語って、そういう孤独を引き受けて行こうという作者自身の決意を厳しく感じさせるところがある。『満月をつかまえに』は孤独感を抱いていた幼年時代、『白い蛹は口笛を吹く』は親しかった友人との違和に感じた孤独感といったように三浦淳子は人間の孤独を語るというところに作家としてのテーマを見つけ出したと言えるのかも知れない。
(「映像」創刊準備号1998年4月「孤独と祖母と」より抜粋) |